社長ブログ

社長、コロナ騒動を振り返る④

こんにちは。㈱昭和技研工業の岩井です。遡ること 8ヶ月、滞在先の韓国での予定をキャンセルし急遽帰国、台風19号の対応に当たってから 1週間後の10月19日(土)のことです。私のもとにムンバイから一通のメッセージが届きました。数年前、デリー郊外の工業団地にお伺いした際にお世話になった会社の会長の息子さんからで、私としては今更ビジネスの話をされても困るなぁと思いましたが、11月に入って2度目の連絡、奥様と妹さんと3人で日本に遊びに来るとのこと。頼れる日本人の知り合いは私しか居ないようでしたから、予定を空けて東京の観光案内をしてあげる約束をしたんです。来日は2020年3月1日(日)で、2週間の滞在予定とのことでした。

正月の2日(木)には新年の挨拶が届き、来日初日に浅草で会うことに決まりました。成田に降りるなら都営浅草線に乗り入れている京成線に乗れば便利だと伝えたのですが、もうJRの優待券を購入してしまったとのこと。仕方なく東京駅で待ち合わせをすることにしましたが、成田エクスプレスの到着ホームは地下5階。30分の遅れは誤差の範囲と考えるインドの人との待ち合わせ、しかも構造の良く分からない不慣れな東京駅地下ホームでそれを実践するとなると、合流までに相当な困難が待ち構えているのは必至で、のっけからブルーな気分です。

気を取り直して食事のアレンジ。以前、浅草でボランティア活動中、インド人観光客に「良いベジタリアンレストランを教えてくれ」と頼まれて、本来は特定の店を紹介するのはNGなのですが、色々と調べてあげました。今は随分と増えましたが当時は違って、ベジタリアン料理・ヴィーガン料理を提供してくれる店は、浅草界隈には ほとんど有りませんでしたから、「上野辺りまで出れば、インド料理店が沢山ありますから、そこに行けば間違いないですよ」と答えると、「日本に旅行に来て、何故、わざわざインドカレーを食べなきゃいけないんだ?俺は日本のベジタリアン料理を食べたいんだよ!」と、散々駄々をこねられました。今思うと、精進料理とか薬膳料理とか、或いはマクロビみたいなものを検索すれば、喜んでもらえたのかも知れませんね。今回のお客さんは、マハーラーシュトラ州在住ベジタリアンの若者3名。浅草の専門店を幾つかネット上で見繕っておきました。

そんなこんなで私が思いを巡らしている間にも、湖北省武漢では新型コロナウイルスが密かに感染を拡大、私たち人類が恐怖のどん底に突き落とされる瞬間が、刻々と近付いていたのです。

1月29日(木)、体調不良を訴える5人を含む、日本人206人がチャーター便により武漢からが帰国。うち2名がPCR検査を拒否し帰宅する等 、日本人の間にも動揺が広がる中、彼から4回目のメッセージが届きました。マスクが店頭から一斉に消える等の日本の混乱振りは、インドにも既に伝わっていたようで、「マスクはN95を用意したから問題ないよね?」とか、「消毒液を持ち歩けば大丈夫だよね?」とか、心配ながらも日本行きを相当楽しみにしている様子。私も分かる範囲で回答はしましたが、何せ “未知のウイルス” 、私に判断を求められても困ります。「I have no idea. It’s up to you.」来るか来ないかも含め、最終的には自己責任で決めてもらうしかありません。

そして2月14日(金)、前々回もお話ししましたが、私に行動変容を促す大きな切っ掛けとなったのが、都内タクシードライバーの感染確認です。この 5回目のやり取りでメッセージを送ったのは私の方からで、記録を見ると「日本はウイルスの封じ込めに失敗したから、来日を考え直した方が良い。もし君が来たとしても、私が東京駅まで迎えに行くことはないから。」と、彼にハッキリ伝えています。その後、3月6日(金)の段階では彼の無事を確認してします。「気温27℃を超える環境では、新型コロナは増殖しないらしいから、ムンバイは大丈夫。」と気丈に振舞ってはおりましたが、希望的観測虚しく、3月25日(水)にはインド全土がロックダウンに突入。1ヶ月後に失業率が27%を超えると一転、感染拡大が続く中 6月には殆どの産業で営業を再開するなど、新型コロナウイルスとの共存を模索する動きを加速しています。

6月16日(火)に発表された厚労省の抗体検査の結果は、東京 0.10%、大阪 0.17%、宮城県に到っては 0.03%。ソフトバンクグループが独自に行った大規模調査でも0.43%という低い値、つまり日本に於いては、99%以上の人たちが新型コロナに対する抗体を持っていません。この数字をどう評価し、予測される第2波・第3波に備えながら、日本経済を如何に回復軌道に乗せるのか?人生は決断の連続です。

※一部の表現を変更しました。